途上国でビジネス講座 パナソニック創業者、松下幸之助の経営論をテーマに授業してみた




青年海外協力隊としてグアテマラに派遣されているオチョ(@diadecanicula)だけど、コミュニティ開発活動の一環で現地の様々な住民グループ(女性グループ、若者グループ、職人グループなどなど)にビジネス講座を開く機会が増えてきました。

ただ、私には優秀なカウンターパートがいて、いわゆる教科書的なマーケティング講座、会計講座、みたいなものは彼が全て出来てしまうので、あえて私がする必要はありません。

そんな途上国の人々向けのビジネス講座に私が取り上げてみたテーマ、パナソニック創業者、松下幸之助の経営論

1989年に亡くなってもなお、本屋さんのビジネス書コーナーにはその経営論や人生論について書かれた本が多く並べられており、「経営の神様」と称され、未だに根強い人気と知名度をもつ日本の経営者の代表格、松下幸之助さん。

どうしてこのテーマを取り上げたのか、この講座を通じてどのようなことを伝えようとしているのか、といったことを中心に書きます。

はたして、途上国の人たちにどこまで伝わるのかはわかりませんが。(そもそも私のスペイン語力大丈夫か?という問題もありますが・・・)

 

 

「お金が無い」は言い訳にならない、貧乏だった松下幸之助の少年時代

日本で一番有名な経営者といっても過言ではない松下幸之助さんですが、彼の少年時代についてはあまり知られてないのではないでしょうか。

インターネットで調べてみると驚きの事実がわかります。

 

1899頃、父が米相場で失敗し破産したため、一家で和歌山市本町1丁目に転居し下駄屋を始めた。しかし父には商才もなく店を畳んだため、尋常小学校4年で中退し、9歳で宮田火鉢店に丁稚奉公に出される。

Wikipedia 松下幸之助より引用

 

なんと、松下幸之助さんは子供の頃、家が貧乏で小学校を中退しなければならないほど経済的に恵まれていなかったのです。

家庭の影響で、今では途上国の人でも当たり前に受けられるような教育すらロクに受けることができなかった。

そのような境遇だったにもかかわらず、働きながらエンジニアとしての技術を磨き、若くして起業し、今や世界的な大企業となったパナソニックを一代で築き上げた松下幸之助さん。

途上国の人に限らず、現状から抜け出したいけど抜け出せない、その原因に、「お金がない」、「時間がない」、「とにかくリソースがない」・・・

確かに途上国ではこのような環境の問題が多々あるのも事実ですが、いまや世界的な企業となったPanasonicの経営者もかつて、何もないところからスタートしています。

そのことから、「お金が無い」は言い訳にならない、ましてインフラも昔より整備され、インターネットも普及した今の世の中においては「やらない理由」なんてそうそう見つかるものじゃありません。

 

アクティビティ 松下幸之助さんの少年時代の逸話

また、こんな面白い少年時代の逸話があったので、途上国の人にもクイズ形式で紹介するようにしています。

若くして自転車工場で働いていたとき、お店に来たお客さんにたびたび、少し離れたところにあるタバコ屋さんまでパシリとしてお使いに出されていたんだそうです。

そんな時、彼はあることをひらめき、それを実践した。

さて、それはどんなことでしょう?

 

 

(答え)
タバコを纏め買いしてストックし、お客さんに販売する

 

 

こうすることによって彼はいちいちタバコ屋まで往復するのにかかる負担を軽減するだけでなく、利益を乗せてお小遣いまで手に入れたのだとか。

偉大な経営者ともなると少年時代から既にビジネスの感覚を身に着けていたんですね。

 

 

いかに売るかを考える、松下幸之助が実践していたマーケティング

松下幸之助はまた、マーケティングという考え方が定着していなかった時代からマーケティングを自身のビジネスに取り入れていたことでも知られています。

 

松下は優秀な技術者だったが、それ以上にマーケティングの才があった。砲弾型ランプの需要が旺盛なのに乗じて、日本全国に販売網を構築した。全国的な販売網を構築し終わると、今度は松下の製品に商標の「ナショナル」を表示し、大量販売できる製品に育つことを狙ってそのランプの価格を引き下げた。さらに、他に先駆けて全国紙を使った新聞広告も打った。これは1920年代の日本にはほとんど見られない手法だった。

DIAMONDO online より引用

 

いわゆる4P戦略(Product:商品、Price:価格、Place:流通、Promocion:広告)という、いまでこそマーケティングの常識として教科書で学べるような内容ですが、松下幸之助さんは当時まだマーケティングという考え方が普及していないなか、100年近くも前からこれを実践していました。

途上国といえど、今は物を作れば売れる、いわゆるプロダクトアウトの時代ではなく、いかに売れるものを作れるか、マーケットイン的な考え方重要な時代です。

モノが少ない100年も前からマーケティングの考え方を取り入れ実践していた人がいるのに、これだけモノが溢れている今、その重要性が無視できないことは周知の事実でしょう、ということが伝わればいいなと思ってます。

 

アクティビティ パナソニックの社名変更に学ぶ企業ロゴの重要性

パナソニックが社名を変更している、という経緯もマーケティングに関連して途上国の人たちに伝えるべきエピソードです。

元々は創設者である松下幸之助の名前を取って、松下電器工業という名で会社がスタートしたことは、途上国の人だけでなく、今や日本の若い人もにもあまり知られていないかもしれません。

「ナショナル」、「パナソニック」などのブランド戦略に成功し、グローバル化も進む中で更に企業イメージを浸透させる必要があったパナソニックは創業者である「松下」の名を改め、社名をパナソニックにしました。

 

補足
因みにパナソニックの由来は、元々は輸出用の高性能スピーカーに使われたロゴで、「全て」を意味するギリシャ語のPANと、「音」を意味する英語のSONICを組み合わせたものなんだそうです

 

私がここで途上国の人たちに強調して伝えたいのは親しみやすく覚えやすい企業ロゴの重要性です。

企業ロゴの重要性は社名のそれに勝る、という事例がパナソニックなのです。

途上国の人にはロゴを持つ、という感覚がまだあまり浸透していないように思います。

他者に負けない自慢の商品を持っていたら、製品にロゴをつけ、差別化する。

やがてロゴは、「このロゴのついた商品なら問題ない」という信用に変わり、消費者はそのロゴのついた製品を選んで買うようになっていく。

このアクティビティではロゴについてどんなイメージを持っているか、製品を二つ(ロゴ有りと無し)並べて検討してみたり、既にこのようなロゴを持っている職人さんには、どんなロゴでどんな思いを込めたものなのか、みんなの前で発表してもらったりしています。

いまや「パナソニック」という名を聞けば誰もが質の高い電気製品を想像するように、途上国の職人さんたちも自身が誇れるような製品とロゴを持って欲しいな、と思います。

 

 

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働く意義 誰のための会社か、誰のための経営か

人はなぜ会社を創り、経営し、会社のために働くのでしょうか?

お金を稼ぐため?

家族を養うため?

松下幸之助さんのベストセラーである「道をひらく」ではこのように書かれています。

 

自分の仕事は、自分がやっている自分の仕事だと思うのはとんでもないことで、ほんとうは世の中にやらせてもらっている世の中の仕事なのである。ここに仕事の意義がある。

「道をひらく」より引用

 

利益のためでも、贅沢な生活をするためでもなく、社会のために、社会が必要としているからこそその対価としてお金が払われ、仕事として成り立っている

農家の人が野菜を作って売るということも、職人さんが作品を作って売るということも、その仕事や製品、サービスに携わった人が少しでも幸せになるように、そうすることでよりより社会が実現するように、ということを意識するとで、何気なくこなしている仕事の意義が見えてくるのではないか。

 

アクティビティ ポジョ・カンペーロの仕事の意義とは

そんなことを少しでも意識して欲しいと思い、「ポジョ・カンペーロ」というグアテマラ人に馴染みのある企業(フライドチキンのチェーン店)を使ってこんなアクティビティをやっています。

 

(お題)
あなたはポジョ・カンペーロの経営者です。
あなたは何のためにこの会社を経営しているのか、この会社によって誰が幸せになるのか、想像してみてください。

このお題をグループで話し合って、発表してもらいます。

すると、色んな意見が聞けて面白いです。

 

「美味しいフライドチキンを提供して食べたお客さんが幸せになります」

 

「子供達に十分な栄養を与えることが出来ます」

 

「お店で家族が団欒し、楽しい時間を過ごすことができます」

 

「ポジョ・カンペーロで働く従業員がお給料を貰って幸せになります」

 

などなど。

 

規模の大小に関係なく、みんながやっている仕事には意義がある、そんなことをこのアクティビティを通じて意識してもらえればいいな、と思います。

 

 

ビジネス講座をやってみて、途上国の人々の反応と感想

このようなビジネス講座を派遣国のグアテマラで実施して、現地の人々からさまざまな反応を得ることが出来ました。

 

「あの世界的に有名なパナソニックを創業した人が学校にも通えないほど貧乏だったとは驚きだ」

 

「少年時代からそんなビジネスを思いついて実践しているなんてさすが」

 

「日本の経営者の話を聞く機会がないので新鮮だった」

 

「自分の仕事が誰のためのものか、改めて考えるよいきっかけになった」

 

「私もステキなロゴを考えて作りたい」

 

「パナソニックのテレビほしい」

 

などなど・・・

 

私自身、この講習会を準備する過程で松下幸之助さんのことを色々調べて、知らなかったこともたくさん出てきて、非常に勉強になりました。

「経営の神様」といわれるだけあって、インターネットで少し調べるだけで情報がたくさん出てくるので資料も作りやすかったです。

日本からちゃんと本を持ってこなかったことが心残りで、ネットの情報をつぎはぎしながら作った資料なので、もしかしたら事実と異なる点があるかもしれません。

ただ、事実に沿っているかどうかよりも「この講習で伝えたいことは何か?」を意識しています。

日本を代表する経営者のエピソードが、現地の人々にとっていい刺激となり、いつかその背中を少しでも押す力になったらいいなと思う今日この頃です。

 

 

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2 件のコメント

  • すごく面白い記事でした。
    記事とは関係ないですが、ポジョカンペロって完全に独占企業ですよね。セットの価格とか見ると、一般のグアテマラの家庭からしたら高級料理の部類ですよね。まあ、グアテマラの大企業はすべて独占か寡占ですけど。

    • 記事の感想ありがとうございます。面白いと思っていただいて嬉しいです。
      ポジョカンペロはグアテマラ企業のなかでもがんばってますね、マクドナルドやタコベルなどの外資外食チェーンと隊等に競っていて素晴らしいなと思います。

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    ABOUTこの記事をかいた人

    一部上場企業での海外営業、シンガポール駐在を経て、いろいろあって気がついたらグアテマラでボランティア。30にして「レールから外れる」を経験した男の働き方観、離婚経験を含む生活観、そしてボランティアとして生活したグアテマラの魅力、スペイン語学習方法を中心に発信します。