青年海外協力隊先輩隊員の最終報告 2年間何も出来なかったって?

先輩
私はこの2年間、何もすることが出来ませんでした・・・
やりきったという達成感は無く、今はただただ悔しい気持ちでいっぱいです・・・

 

青年海外協力隊、2年間の任期を終えた先輩。

彼女は後輩隊員やJICA職員の見ている前で悔し涙を浮かべながら声を振り絞るように、そうこの2年間を振り返った。

つい数時間前に「はじめまして」の挨拶をしたばかりの私には、正直この状況が理解出来ず、混乱していた。

説明会で聞いたOB・OGの話、あるいは協力隊の広報誌に出てくる帰国後の隊員の話、彼らは往々にして、満面の笑みを浮かべて、

“2年間でこんな経験ができてとても満足だ”

といっていた。

それなのにこの先輩は何も出来なかった?ただただ悔しい?いったいどういうこと?

どうしても気になって、その後先輩にお話を聞いた。

また、先輩の最終報告を聞き、彼女の経験した2年間の葛藤を垣間見た。

先輩が悔し涙を流すのをただ見ていることしか出来なかったオチョ(@diadecanicula)だけど、そんな先輩に伝え切れなかった思いをここに書くことにする。

これは、あのとき先輩の悔し涙を拭いてあげることの出来なかった、遅れてきた木綿のハンカチーフ的な記事なのである。

 

 

何も出来なかった、の本当の意味

何も出来なかったといっても、実力が及ばなくて何もしなかったとかそういうわけではない。

彼女なりに創意工夫をし、職場の同僚とうまくコミュニケーションをとり、地域の住民の生活を少しでも良くしようと懸命に努力した。

ただその結果として、そこに根付いた住人の習慣はなかなか変えられなかったというものだ。

そこにはいくつか、特筆すべき困難な壁が立ちはだかっていた。

言葉の壁

言葉の壁といってもスペイン語のことではない。

話者数を言語名の大きさで表したマヤ語の地理的分布。キチェ語(200万人)・ユカテコ語(90万人)の他は大文字(10~50万人)、中文字(1~10万人)、小文字(1万人未満)

Wikipediaより引用

上の添付画像の通り、グアテマラ国内だけでもたくさんの現地語が混在している。

そして先輩の活動地域はその中でも特に先住民の現地語が多数混在する地域だった。

時には現地の人同士ですら、通訳を介さないとコミュニケーションを取れないような場所である。

言葉の違いとは即ち文化圏の違いでもある。

異なる文化圏の混在する地域でコミュニケーションツールの要である言葉が通じない、これは現地の住民と交流を深める上で大きな障壁だったに違いない。

政治の壁

途上国における政治は時に公平・公正とは程遠く、一握りの人間による恣意的な操作、反対派への差別が露骨だ。

行政機関に配属された彼女はそれを目の当たりにする。

行政機関は当然のように、選挙のときに自分を支持した地域を優先的に支援し、そうでない地域の支援をないがしろにする

ある時、行政の指示で進めていた道路整備の状況に彼女は衝撃を受ける。

道路整備はある家の手前でぴたりと止まった。

理由は言わずもがな、その家は選挙のときに現行の政府を支持しなかったのだ。

そんな環境では、ボランティアとしてフラットな目で各地域の住民と一緒に活動するのは非常に困難であろう。

住民の壁

その地域はグアテマラの中でも特に内戦の激しかったところ。

その復興のため、各国から支援の手が差し伸べられた。

しかし住民は、それら過去の支援に心から感謝することができない。

 

ボランティア
あなた達には○○が足りません!だから私達がそれを差し上げます!

 

そういってボランティアは住人が大して必要としていないものを押し付ける。

ボランティアは住民があたかもそれを貰って満足しているかのような写真を撮り、自国に報告し、満足げな顔をして帰っていく。

アフターフォローの無いおせっかい支援

そうして住民のなかには、外部からの支援に対するある種の嫌気が蓄積される。

先輩は、また外からボランティアが来た、と、冷たい視線を浴びながら活動をしなければならなかった。

 

 

先輩に伝えたいキレイごと

ここからは私の独断と偏見で、先輩から聞いた話をもとに思いついた、慰めにもならないただのキレイごとである。

まあせっかくなので、声を大にして叫びたいと思う。

選択させたことの意味

オチョ
先輩がその地に行き、地域の住人に必死に生活改善を訴えたのは紛れも無い事実です!
もし先輩がその地に行かなければ、彼らは彼らの価値観の中でしか生きなかった!
でも先輩が別の価値観を訴えたことで、住人達は何かしら考えたはずです!
考えた上で、「改善は必要ない」と住人が選択したのですから、その選択は尊重するしかありません!
その選択をさせたことに、ボランティア活動の意味があると思います!
少なくとも私は、他の先輩達の報告、住人の協力を得られた事例と比較して、先輩の活動成果が劣っているなどとは全く感じません!
得られた結果は違えど、どちらのプロセスにも同じだけ重要な意味があるはずです!
優劣なんてありません!
それにもしかしたら、将来的に「やっぱり改善が必要だ」って思うときが来るかもしれません!
先輩の蒔いた種がいつ芽吹くかなんて誰にも分かりません!
先輩が帰国した後も、先輩の残したものは誰かの中に生き続け、その人が次にとる行動にきっと影響を与えます!

要請外の活動

オチョ
先輩は配属先でJICAの要請に沿った活動以外にも、たくさんの活動をしました!
職場内の風通しを良くする為インフォメーションマップをデザインしなおしたり、講習会のマニュアルを作り直したり、外部から来た人間だからこそ気づける違和感を問題提起し、形にしました!
予算は活動先に出させるという姿勢を貫き、向こうの小さな動きを辛抱強く待ち続けました!
同僚が政治的な理由で思い通り動いてくれない、住人が協力的でない、そんなことを言い訳にして引きこもったりせず、先輩は自分に出来る範囲で出来ることを見つけ、それを丁寧に実現させてきました!
一つ一つは小さなことかもしれませんし、JICAの要請とも関係ないかもしれませんが、それは紛れも無い先輩の活動の成果です!

先輩の姿勢そのもの

オチョ
「私は何も出来なかった」
活動2年間の締めくくりにみんなの前で堂々とそんなことを言える先輩の姿勢、そのものが素敵です!
私だったら、仮に大した活動をしていなくても、自分に都合の悪いことは隠して、それなりにやったように見せようとすると思います!
そうせずに、出来なかったことを出来なかったと、胸を張って発表する姿勢は、活動が上手くいかずに悩んでいる後輩隊員、このままでいいのかと自問自答する後輩隊員に勇気を与えたと思いま!
少なくとも私は、その姿勢に勇気を貰いました!
帰国直前のギリギリのタイミングでそんな先輩の活動を、ほんの一部でも、知ることが出来て嬉しく思います!

 

 

先輩の言葉

実は、初対面にもかかわらず、まぁ、上記全てではないが、生意気にも私は実際に先輩に直接、思うことを伝えてみた(いや、さすがにメガホン使って叫んだりはしていないよ)。

 

先輩
そうはいってもね、実際はああでこうで・・・

 

とまぁ、着任してわずか2ヶ月、しかも初対面の私が放つぺらっぺらのキレイごとは簡単にいなされてしまった。

 

オチョ
(まぁ、そりゃそうだよな~、2年間その現場に立ち続けて自問自答しながら乗り越えた先輩が、その難しさを一番よく理解されている、機嫌悪くしちゃったかな~・・・)

 

先輩
青年海外協力隊、別に大層な夢もなく参加したんだけど、いざ自分が必要とされない状況におかれたらツラかった・・・

 

先輩のそんな言葉が私の心に重く響いた。

 

私からこれ以上、なにも言うことはあるまいな・・・

 

でも、

 

先輩
でも、そんな風に言って頂いて嬉しいです。ありがとうございます・・・

 

・・・

 

・・・

 

私の記憶違いでなければ、先輩は最後にそんな風に言った気がする。

木綿のハンカチーフは彼女の涙にほんの少しだけ届いたのかもしれない。

なんつって!!!

 

 

その他、オススメ記事

新卒の青年海外協力隊から学んだことあれやこれや▼

新卒青年海外協力隊のパワーなんなん!?大学卒業したての彼らが最強だと思う理由

2017.08.14

新卒の青年海外協力隊になりたてのとき、自戒の念を込めて書いて記事▼

青年海外協力隊を“冒険”と表現することの甘さとリスクについて真剣に考える

2017.07.07

グアテマラのステキな家族に教わったステキなこと▼

父と子が紡ぐ糸 グアテマラで青年海外協力隊活動中に見たステキなカゾクのカタチ

2017.07.12

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA